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2014年9月26日金曜日

ワクチンについて

<総論>
☆ワクチンの種類
生ワク:ムンプス、風疹、麻疹、ポリオ、結核、水痘(生きるのは無風の進歩の結果です)。他は不活化かトキソイド。
☆接種方法
・筋注:HPV、経口:ロタ、皮内注:BCG、他は皮下注
・原則は不活化、トキソイドは局所反応が起こしやすいため深い場所に接種する必要があり、免疫反応が起こりにくいため血流の多い筋肉に接種するべきだが、筋注を指定しているのは現状はHPVワクチンのみ。従って、不活化、トキソイドは皮下深くに接種する。生ワクは局所反応が起きにくいため皮下注でよい。
・皮下注:上腕伸側の皮膚をつまんで30度の角度で針は16mm。筋注:肩の三角筋に垂直に針は25mm。
cf)橈骨神経は上腕伸側の中1/3において背側から腹側に斜めに下降するので、この部位での接種は橈骨神経の損傷を起こす危険性がある。従って接種部位は上腕伸側の上1/3または下1/3が適切である。
☆接種間隔
・不→不、不→生は1週間、生→不、生→生は4週間あける。
・同時接種は左右の上肢に1回ずつ別々に接種する。同側なら3-5cmあける。製剤同士は絶対に混ぜないこと。
・同日接種(朝に検診で接種し、その後来院し他のワクチンを接種)は自治体によっては2回目の保険が通らないこともあり。
☆副反応
①軽微なもの:局所反応:疼痛、腫脹、発赤、硬結、全身反応:発熱、倦怠感、頭痛→数%にみられ、自然軽快する
cf)インフルエンザワクチンによる発熱は当日~翌日、37度台~39度台まで様々。インフルエンザワクチン後に発熱することがあるが、抗体産生まで1週間くらいかかるので、ワクチンによる発熱かインフルエンザ感染による発熱かわからない。
②生ワクによる原疾患類似の症状:麻疹、風疹ワクチンで発熱、全身の発疹→2、3日で軽快し、本来の麻疹、風疹ではないので伝染はしない
③重篤なもの:アナフィラキシーショック(数千~数万分の1、接種後30分以内)、ADEM(急性散在性脳脊髄炎、数万~数十万分の1)、血小板減少性紫斑病
☆接種禁忌
①重篤な急性疾患
②当該ワクチンに対してアナフィラキシーショックの既往ある場合
③免疫抑制状態:先天性免疫不全、ステロイド、免疫抑制剤、抗癌剤使用中
④半年以内の輸血、γグロブリン製剤の使用歴(生ワクのみ禁忌、免疫応答が起こらない)
⑤妊娠中の生ワク(特にMRワクチン)
⑥卵アレルギーでの黄熱ワクチン(インフルエンザワクチンは重篤なアレルギーでなければ接種可)
⑦エリスロマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンアレルギーに対する麻疹、風疹、MR、ムンプス、水痘ワクチン
・37.5℃以上の感冒や軽微な感染性腸炎は数日は接種見合わせ、麻疹後は4週間、風疹、水痘、ムンプス後は2-4週間、伝染性紅斑後は1-2週あけて接種するが医師の判断で接種も可能
・定期接種の重篤な副反応は予防接種法で補償、任意接種はPMDA(医薬品医療機器総合機構)にて保障される
cf)ワクチンの目標抗体価
麻疹EIA IgG 8-10倍以上、SRL 5-8倍以上
風疹HI IgG 16倍以上
水痘EIA IgG6-8倍以上
ムンプスEIA IgG 6-8倍以上
(医療従事者の場合は異なることがあるので要注意)

<各論>
☆B型肝炎(任意)
・周産期感染(垂直感染)は95%がキャリア化→母子感染予防事業で0.024%まで低下
・乳幼児、小児に周囲のキャリアからの唾液感染、成人以降はSTDとして水平感染することあり、定期接種化が望ましい
・水平感染では30%が急性肝炎(うち2%が劇症化し致死率は70%)、数%がキャリア化
・定期化されたHib、小児肺炎球菌ワクチンと同時に2か月以降に接種すべき
・本来は筋注が望ましいが、皮下深く接種する
☆Hib、小児肺炎球菌(定期)
・髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎を予防する
・小児肺炎球菌は2013年から13価に変更(それまで7価)
・Occult bacteremia(高熱だが全身状態が良好で感染巣が不明な小児での菌血症)はHib/肺炎球菌ワクチン2回接種児ではリスクは1%未満、接種なければ10%あり
☆破傷風(定期:DPT)
・土の中にいるClostridium tetaniから感染する
・100人/年発生、発症すると致死率は20-50%
・DPTワクチンは乳幼児期に4回接種し、11歳でDTを1回接種するが、10年ごとにブースター接種が必要
・汚染された外傷では、
 DPT接種なしか不明なとき:テタノブリン筋注、その場で対側の三角筋にTd1回接種、1M後に2回目、6-12M後に3回目 
 DPT接種ありで最終接種から5年以上ならその場でTd1回接種、5年未満なら予防必要なし
(定期化されたのは昭和43年以降なので昭和43年以前に生まれた人はDPT接種なし)
☆百日咳(定期:DPT)
・新生児から乳幼児の致死率が高い
・ワクチンは生後3か月以降
・成人のアウトブレイクから感染するため周囲の人はワクチンで防御する必要あり
・アメリカでは2011年のアウトブレイクを受けて、全成人と妊婦(不活化なので接種可)にDPTワクチンを接種を進めた
・DPT0.5mlを成人に接種すると発熱、局所反応(自然軽快するが)が起こりやすいので0.2mlにし、0.2mlで十分に免疫力を得られる(Tdapは日本は未承認)
☆麻疹、風疹(定期:MR)
・日本は麻疹輸出国、麻疹は年間300人、先天性風疹症候群は年間16人発症している
・南北アメリカは麻疹、風疹を排除できている
・1歳と就学前(5,6歳)の2回接種する
・生ワクなので妊婦には禁忌
cf)ワクチン接種後に抗体価が上昇しない場合
・風疹ならEIA IgG8.0未満、ムンプスなら4.0未満であれば再接種。
・2回目の接種でも抗体上昇を認めないなら接種製剤を変える(違う会社のものにする)と効果がある。
・風疹ワクチン接種後2ヶ月間は避妊が必要だが、風疹ワクチン接種後に妊娠が判明した場合でも、これまではワクチン接種による先天性風疹症候群の報告はない。
☆日本脳炎(定期)
・ブタからアカイエカを介して感染
・ほとんどは不顕性で発症するのは0.1-1%。しかし発症すると致死率は20-40%、神経学的後遺症は45-70%
・ワクチンは6か月から接種可能だが、日本では推奨接種年齢が3歳となっている(しかし、現実は新生児、乳児期にも蚊に刺されるリスクあるので6か月で接種するのが望ましい)
・九州と四国地方での報告が多い
☆水痘(任意)
・空気感染する上、90%が顕性感染なのでアウトブレイクを非常に起こしやすい
・致死率は10万人あたり1-14歳で1人、15-19歳で2.7人、30-49歳で25人
・多彩な合併症:二次性皮膚細菌感染、二次性細菌性肺炎、一過性小脳失調、髄膜炎、2%未満で20週以下の妊婦で先天性水痘症候群、将来の帯状疱疹のリスク
・ワクチンは2回接種が望ましい(13歳未満は3か月間隔、13歳以上なら4週間空けて)
・通常は1歳で1回目、就学前(5,6歳)で2回目
・暴露後接種が有効なので、水ぼうそうの児に接触した場合はすぐに接種する(特に兄弟の一方が発症したらもう一方に必ず接種する)。72時間以内なら90%、5日以内なら70%で発症を防げる。
☆ムンプス(流行性耳下腺炎)(任意)
・特に問題になるのは難聴で年間650人、不顕性によるものは年間2500人。片側だが、聴力予後は極めて悪い。
・水痘以上に多彩な合併症:髄膜炎、脳炎、精巣炎、卵巣炎、乳腺炎、膵炎、流産、心筋炎、腎機能障害、小脳失調、ギランバレー症候群
・2回接種が必要。1回目は1歳、2回目は就学前(5,6歳)。キャッチアップは4週間空けて行う。
☆HPVワクチン(定期)
・不活性化で初めて筋注指定
・子宮頸部上皮内腫瘍を95%減らしたが子宮頸癌を減らしたevidenceはない
・4価ワクチンでは尖圭コンジローマも予防できる
・子宮頸癌関連の16価の血清型のうち2価もしくは4価のみの予防のため、20歳以降の子宮頸癌検診の受診が必要
・2013年6以降は接種後の重篤な有害事象が複数報告があり定期接種のままだが、積極的な接種勧奨は差し控えられている
・ワクチンと有害事象の因果関係は不明
・感染経路はSTDのみ。sexually activeでなければすぐに接種が必要というわけではない。
☆成人肺炎球菌ワクチン(任意)
・成人用はPPSV(Pneumococcal Poly Saccharide Vaccine/13価/ニューモバックス)、小児用はPCV(Pneumococcal Conjugate Vaccine/7価/プレベナー)。
・PPSVはもともと小児用として開発されたが、成人でのみ抗体価を上げた。PCVはPPSVの製剤に加工し免疫反応を起こしやすくしたもの。
・PPSVが市中肺炎を減らしたというevidenceはない。IPD(肺炎球菌関連の髄膜炎や敗血症)を減らす。
・肺炎は予防しないが重症化を防ぐワクチンであると理解する。
・老健施設でのHNCAPを減らしたevidenceはある。
・無脾の人はIPDのリスクが高いので必ず接種する。2歳以上であればPPSVの接種は保険適応あり。
・2回目以降の接種は禁忌ではないが、局所反応や全身反応が強く出ることに注意する(以前は再接種は禁忌だった)。
・無脾の人で以前接種した人は5年以上経過したなら65歳以上で2回目接種する。
・インフルエンザ流行期には同時接種も可能だが、現実的にはインフルエンザワクチンの1週間後、必要あれば肺炎球菌ワクチンを接種。
・呼吸器学会のアルゴリズムでは65,70,75,80…歳(5の倍数)ならニューモバックスを定期で接種し、5年以上あけて再接種(任意)、中途半端な年齢ならプレベナーを接種し、次の5の倍数の年齢時にニューモバックスを定期(2回目以降のニューモバックスは任意)で接種する。

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