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2014年9月25日木曜日

カテ熱(CRBSI)について

☆カテ熱(CRBSI:catheter related blood stream infection)について
・カテーテル刺入部の排膿、発赤、圧痛あればすぐにカテ抜去(しかし、このような場合は稀)。septic shockの場合は感染源を疑うなら血培採取後、カテを入れ替えて広域の抗生剤(MEPM+VCMあたり)、shockの治療に入る。血行動態が安定しているなら抗生剤を開始しながら血培の結果を見て判断してもよい。通常はカテ抜去だけで熱が下がる。
⇒カテが入っている人の熱で他に熱源がなさそうであればカテ抜去し、末梢点滴+抗生剤(S/A等)で様子見るのが基本。
・sepsisを疑う場合、熱がないから血培をとらないのはナンセンス。低体温はより危険。
・カテーテルが入っていて、熱源がはっきりしない場合はカテーテル感染を必ず疑うこと。
・カテ熱で刺入部に発赤がみられるのは3%程度。原因菌の8割はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌という弱毒菌のため、局所に炎症を生じにくい(∴抜去だけで熱が下がる)。
・カテ熱で状態が悪く、カテ先培養と血液培養で同じ菌種(グラム陰性桿菌、MRSA、カンジダsp.、黄色ブドウ球菌、腸球菌、真菌、抗酸菌など)が同定された場合は、カテ抜去で末梢で様子見るのがベター。違う部位からカテ挿入してもいいが、ガイドワイヤーを使っての入れ替えは禁忌。
・カテ熱(カテーテル関連血流感染症:CRBSI)の診断基準:
基準(1):1回もしくは複数回の血液培養から病原体が確認される。さらに 血液から培養された微生物は他の部位の感染に関係がない
基準(2):以下の症状や徴候が少なくとも1つある
①発熱(>38℃、熱型の特徴はspike fever)、悪寒戦慄、低血圧
②徴候や症状そして陽性の臨床検査結果が他の部位の感染に関係がない
③一般の皮膚汚染菌(類ジフテリア、バシラス属、Propionibacterium属、CNS、ビリダンス群溶連菌、ミクロコッカス属)が別々の機会に採取された2回以上の血液培養検体から培養される。
 基準(3):微生物学的診断
①カテーテル先端の培養(定量or半定量)の検出菌=末梢静脈血からの検出菌
②カテーテル採血培養が末梢静脈血培養よりも2時間以上早く陽性になる
③カテーテル採血培養:末梢静脈血培養≧5:1
④カテーテル挿入部中心静脈血の定量培養(一般細菌≧100CFU/ml,真菌≧25CFU/ml)
cf)カテ熱の治療について
・血培2セット、カテ先培養を採取。
・まずは抜去する(大抵は抜去するとすぐに解熱する)。
・最大の原因菌は耐性ブドウ球菌で、βラクタムは耐性あるため、第1選択はバンコマイシン1g12時間おき。血液培養の結果を見てde-escalationする。
・超重症患者の場合はバンコマイシン(VCM)、メロペン(MEPM)、ミカファンギン(MCFG)を併用する。
cf)療養病院でのカテ熱
・療養病院でのカテ熱のほとんどは風呂熱である(入浴時にCVの保護テープ内にお湯が入り込む)
・CVのナート部位のアイテル(膿)は非感染性で針反応と思われるものもある。
・フルカリック2号でカテ熱疑いの場合はエルネオパNF1号に変えると発熱が収まる場合がある。
・ポート感染疑うときは、すぐ抜去するのではなく、ポートはヘパロックし末梢点滴と抗生剤に変更してみる(ヘパロックは週1で交換する)。
cf)CVカテーテル閉塞時の交換について
・皮膚をカテーテルごとイソジン消毒し、覆い布をかける。
・ハサミでカテーテルの途中を切って、清潔操作でガイドワイヤーを挿入し、固定の糸を抜糸してからカテーテルを抜去する。
・その後はCV留置と同様の操作を行う。
参考1)
・5大医療感染症はHAP/VAP(ハップバップ)、CAUTI(カウチ)、CRBSI、SSI、CDI。CRBSIはCVCが原因の血流感染。診断には血液培養陽性が必須。カテ先培養は定量でなければ意味がない。他のfocusから菌血症を起こし、CVCに菌が付着によるものもある。カテーテル逆血培養1セット、末梢静脈から1セット採取し、カテーテル逆血培養の方が菌量の方が3倍以上多いか、カテーテル逆血培養の方が2時間以上早く陽性になればCRBSIと診断できる(菌量の比較は通常の検査室ではできないため)。診断にCVC抜去は必須ではない。末梢静脈カテーテルによるCRBSIも侮れない。菌はBIOFILMを形成して人工物に付着する。抗菌薬はBIOFILMの表面に効果あるだけでBIOFILM内部の菌には届かない。原因菌は表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、GNRの中でも特にSPACE(セラチア、緑膿菌、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)。SPACEは急変する可能性が高い。予防はマキシマルバリアプリコーションが大切。
参考2)
・CVC抜去せず高張液を浸透圧比1の等張液に変更(ソリタT3やソルデム1)するだけでも解熱することが多い。逆に高張液(ビーフリードやフィジオゾール3号)ではバイオフィルム内に浸透し細菌増殖の原因となる。
・CVC抜去しても解熱しない場合は人工弁などが無くても血管内の粥腫などにに感染がついているのかも。
・CVC穿刺困難な場合はCVCをガイドワイヤーを使って入れ替えるのも方法だが邪道。
カテ感染疑いで血培でカンジダが1セットで陽性になった場合
・酵母様真菌とあれば多くはカンジダ。
・βDグルカン陰性でも真菌感染は否定できない。
・カテ感染疑い+状態不良の場合、カンジダ、黄ブ菌、腸球菌は2セット中1セットでも陽性なら本物でコンタミではないと考えて治療開始する。
・血培からカンジダが採取された場合、通常ならコンタミであるが、カテが入っていて抜去しても熱が下がらない場合や、通常の抗生剤で効果がないときは抗真菌薬を投与する。
・逆に、IVH中でもなく、ケモ中でも免疫不全でもない場合は深在性真菌感染症の可能性はほぼない。
・カンジダ血症のリスク:免疫不全、手術後、ICU、CVC留置中、広域抗生剤使用、APACHEスコア高値、急性腎不全、未熟新生児、外傷、熱傷、埋め込み式人口装置、H2ブロッカー使用、カンジダ定着状態
・カテ感染の4大起炎菌:ブ菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダ
・カンジダ感染症:IE、化膿性血栓性静脈炎、骨髄炎、髄膜炎の他に網膜炎も忘れずに
・カンジダ感染では眼底鏡を必ずチェックする
・C.albicansはフルコナゾール(FLCZ)が有効だが、C.glabra、C.kruseiはフルコナゾール無効なことがあり、ミカファンギン(MCFG)、アンホテリシンB(AMPH-B)を使う。クロモアガー培地で3つが判別できる。
cf)抗真菌薬について
・ファンギゾン(アンホテリシンB:AMPH-B)は25-50mg(0.5-1V)を5%ブドウ糖250-500mlに溶解して3-6時間以上かけて投与する必要がある(5%ブドウ糖で0.1mg/mlとする)。
・ファンギゾン自体に発熱の副作用があることに注意する。
・ただし、ファンギゾンは腎障害など副作用も強いので、ジフルカン(フルコナゾール:FLCZ/アゾール系)50-100mg(どちらも50mlの静注液)+生食100ml1日1回投与が無難。1日最大量は400mgまで。CCr50以上は通常用量、50未満は半量(HD時はHD終了後に通常用量)。
・ジフルカンはC.albicansには効くが、C.glabrata,C.kuruseiには無効。クリプトコッカスには効くがアスペルギルスには無効。
・1日2回だがフロリードF注(ミコナゾール:MCZ/アゾール系)200mg+生食100ml1日2回(ファンギゾンより副作用少ない)もファンギゾンより副作用少ない。併用禁忌はワルファリン、ピモジド、キニジン、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、ブロナンセリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、リバーロキサバン、アスナプレビル。
・アゾール系が無効な場合はキャンディン系のファンガード(ミカファンギン:MCFG)を使う。

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